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院長メッセージ

『コロナウイルス感染症(コロナ感染症)と今後の医療
―医療の維持と経済再生を目指して―』 2020年6月

 緊急事態宣言が解け、漠然とした不安にさいなまれた状況から一歩前進する事が出来ました。この期間、病院への受診制限および面会禁止にご協力をいただきありがとうございます。病院はコロナ対策を行いながら、通常業務体制に復帰しております。
 2009年、旧病院最後の年に新型インフルエンザの世界的パンデミックが生じました(豚インフルエンザ、日本では若年者に感染者多く、死亡者は全国で68名)。しかし今回の様に日本で1000人近い死亡者が出る感染症は100年振りとの事です(6月4日時点で死亡者数は904名、世界では38万人以上)。
 私を含め、全ての医療者が初めて経験する「感染したら命に係わる、治療法が確定していない感染症」です。海外では医療者の死亡も多く報告されています。当院でもマスクやガウン等の衛生材料の不足もあり、担当医療スタッフは心理的に非常に苦しい状況でした。この時期、地域の皆様からのマスクや物品のご寄付、励ましの手紙等の力添えがあった事で、多くのスタッフがモチベーションを保つことが出来ました。当院の対応は地域病院や行政からも高く評価されています。ご支援いただいた皆様に感謝いたします。
 2月のダイアモンドプリンセスに始まった今回のコロナ騒動ですが、3月中旬には一旦収束が見えました。しかし3月の連休後から再燃し、4月に入り感染経路のわからない市中肺炎状況となりました。特に東京は、感染爆発が生じた武漢の再現の様な患者増となり、医療崩壊が懸念されました。神奈川・横浜もその余波を受け患者数が増えました。国は緊急事態宣言を発出し、その後全国に広げました。約7週間の宣言下でコロナ感染症患者が減少し、医療崩壊を防げたことは成果だと考えます。一方これによる経済活動の低下は、今後の国の在り方にまで影響を与えかねない状況となっています。
 では今後、日常生活と経済活動を保つには何が必要なのでしょうか。最も重要なのは東京都知事の「医療崩壊を招かないために行動制限を」という発言にあるように「医療崩壊」を招かない事です。「医療崩壊」とは、武漢や北イタリア、NYで生じた状況です。コロナ感染症患者は入院病棟が限られ、さらに多くの点で医療に手間がかかります(1人の入院患者に3-4人分以上の手間が必要)。4月中旬の全国の状況では、コロナ感染症の入院患者が900名以上/日で退院患者が120名/日程度です。つまり、入院患者数と退院患者数が大幅に異なるため、病床や医療機器・物品の不足と医療者の疲弊による対応能力の低下が発生し、医療は限界を迎える事となります。この状況下では、がんや心疾患、脳卒中、外傷等の治療もできず、コロナ感染症だけでなく他疾患で亡くなる方まで増えます。これが「医療崩壊」です。
 現在は全国でコロナ感染症新規入院患者約50名/日で、退院患者が約150名/日です。入院者が退院者に比し大幅に増えなければ、医療は十分対応できます。このためには、コロナウイルスの特徴を知り、一度に多くの患者が発生するクラスターを防ぐ事が必要です。
 コロナウイルスはインフルエンザ等と異なり環境中に長く残るため、感染者がウイルスを広げた場所(3密空間)で、多くの人が接触し発症する事になります(クラスター発生)。さらに無症状や軽症の感染者が多くいる疾患です。このためPCR検査体制を強化していますが、感染者をすべて把握する事は不可能ですので、やはり皆様の習慣を変える事が必要と考えます。「3密を避ける」「適切にマスクをする」「適切な手洗いを行う」を日常的に行う事で、クラスター発生を最小限に出来ると考えています。ご協力をお願いいたします。
 コロナ感染症を完全に克服する事は、年単位の時間がかかると考えます。「ウイズコロナ(コロナ感染症とうまく付きあう)」の時代が来た、という事でしょうか。コロナウイルスは通常冬に流行します。当院は今後もコロナ対策をすすめ、皆様の生活および経済活動を支える強いインフラとしての病院機能を維持いたします。
 今後とも当院をよろしくお願いいたします。




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